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連載

日本の科学アラカルト72

実用化研究は日進月歩 カーボンナノチューブの未来

2016年8月号

 一九九一年、NEC筑波研究所研究員だった飯島澄男・名城大学終身教授によって発見されたカーボンナノチューブ(CNT)。炭素原子が集まったフラーレンを作成する途中にアーク放電した炭素電極の陰極側から発見した。電子顕微鏡による観察などで、世界で初めてCNTの構造を解明したことで、「発見者」として世界的に認知されている。CNTの存在そのものはそれ以前から確認されており、冷戦時代のソ連でも研究をしていたという記録が残されている。
 発見から相当の月日が経過し、CNTの応用に向けた研究が世界中で進められている。その歩みは日進月歩であり、「本家」の日本でも多くの研究者が取り組んでいる。
 まず注目すべきは、昨年十一月から稼働している世界初のCNT量産工場だろう。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、二〇〇四年に革新的なCNT量産法である「スーパーグロース法」を開発した。その後、NEDOは日本ゼオンと共同研究を進め、量産工場の稼働にこぎつけた。今後、さまざまな用途に向けCNTを安定供給することに繫がる。
 CNTといえば、半導体への応用や電子デバイスへの利用・・・