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社会・文化

実録「慶應病院オペ室」

封印される手術ミス「続発」の戦慄

2016年7月号

 ペンとペンが交差するシンボルマークを誇らしげに縫いつけた白衣の医者と看護師が、威風堂々と行き交う。ここは東京・信濃町の慶應義塾大学病院。北里柴三郎博士を病院長として開院したのは百年近くも昔の一九二〇年に遡る。あまたの政財界人、芸能・スポーツ関係者ら著名人が入退院し、メディアにもたびたび登場してきた日本を代表する白い巨塔だ。上階の眼下には、国立競技場跡地を包む木々の緑が初夏の日差しを乱反射してまばゆく光る。その輝きとは裏腹にこの名門病院でいま、患者が虫けらのごとくバタバタと命を落としかねない杜撰な手術が横行していることは知られていない。慶應病院というブランドの裏に果てしなく広がる深い闇を追う。
不祥事相次ぐ麻酔科の機能不全
 その緊急事態は、小児の先天性の心臓疾患を治すはずのオペで起きた。外科医、看護師、体外循環を担当する技師、そして麻酔科医が病床の子どもを取り囲む。麻酔科医の香取信之専任講師が薬を投与して子どもの意識を落とし、六時間を見込む大手術が始まった。さらに筋弛緩剤を使い、完全に意識がなくなったことを確認すると、気管への管の・・・