三万人のための情報誌 選択出版

書店では手に入らない、月刊総合情報誌会員だけが読める月間総合情報誌

経済

農林中金を襲う三つの大波

「解体処分」を狙う新農水次官と官邸

2016年7月号

 マイナス金利、円高、新農水事務次官―。農林中央金庫(農中)に三つの大波が襲いかかっている。国内運用の柱である国債がマイナス金利で利益を生まなくなったなかで、円高が進行し外債運用に巨額の含み損が発生しつつあるからだ。そして、農林水産省で全国農業協同組合中央会(JA全中)解体を主導した〝天敵”の奥原正明経営局長が次官に昇格。「二〇〇九年の経営危機以上の組織の危機」と農中幹部は語る。農中は解体、再編の可能性も含めた崖っぷちに立たされた。
「二カ月前にはマイナス金利対策、今は円高対策の会議ばかり」と農中の管理職のひとりはぼやく。実際、東京・有楽町のDNタワーにある農中本部は今や深夜まで電灯の消えないフロアが目立つようになっている。
 農中は全国の農協が組合員から預かった資金のうち、自前で運用できない余剰分を「系統資金」と称して預かり、国内外で運用する機能を担っている。自金庫発行の農林債なども含めた資産総額は今年三月末に百兆円の大台を突破、「日本はもちろん世界でも最大級の機関投資家」を自負する。
 ただ、米国のサブプライムローン問題に端を発し、リーマン・・・