イラク・シリアは 「ミニ国家」乱立へ
イスラム国「退潮」で深まる混迷
2016年7月号
イラク政府軍のファルージャ奪還で、「イスラム国(IS)退潮?」の観測が流れているが、実情はもっと複雑だ。ISが去った地域では、政府、イスラム教スンニ派、シーア派、クルド人など様々な勢力が争いを再開しているからだ。イラクとシリアでは、ISが根絶できないまま、十近くの「疑似国家」が乱立する危険が増している。
大量殺害の応酬
イラクのアバディ首相はこの瞬間を待ちきれなかった。六月中旬、首都バグダッドから西に五十キロほどのファルージャで、「ほぼ七割が解放された」との連絡がもたらされると、直ちに国営放送に出演した。首相は「私は皆さんにお約束したでしょう? 我々はファルージャを奪還しました」と誇らしく語った。
だが、ファルージャ入りした各国のテレビ局カメラは、勝利の栄光とはかけ離れた光景をとらえていた。数百人の女性たちが、「私の夫はどこにいるの?」「息子は生きているの?」と泣き叫ぶ姿だ。
やがて、数々の遺体が見つかった。その遺体群は、全身に激しい拷問の痕跡を残していた。ISではなく、「ファルージャ解放」の先頭に立ったシ・・・
大量殺害の応酬
イラクのアバディ首相はこの瞬間を待ちきれなかった。六月中旬、首都バグダッドから西に五十キロほどのファルージャで、「ほぼ七割が解放された」との連絡がもたらされると、直ちに国営放送に出演した。首相は「私は皆さんにお約束したでしょう? 我々はファルージャを奪還しました」と誇らしく語った。
だが、ファルージャ入りした各国のテレビ局カメラは、勝利の栄光とはかけ離れた光景をとらえていた。数百人の女性たちが、「私の夫はどこにいるの?」「息子は生きているの?」と泣き叫ぶ姿だ。
やがて、数々の遺体が見つかった。その遺体群は、全身に激しい拷問の痕跡を残していた。ISではなく、「ファルージャ解放」の先頭に立ったシ・・・