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経済

《経営者東京裁判》數土 文夫 (東京電力 取締役会長)

創造なき破壊者「スド・ジョンイル」

2016年4月号

 ついに始まった電力小売りの全面自由化。開放される約八兆円と目される市場を目指してすでに二百社近くが新規参入、既存の電力大手との間で顧客獲得を競い合う。そんな自由化に足並を揃える形で持株会社体制へと舵を切ったのが東京電力。本体から燃料・火力、送配電、小売りの各事業を切り出し、東京電力ホールディングス(HD)の下に「フュエル&パワー」「パワーグリッド」「エナジーパートナー」の三子会社を配置した。電力各社は四年後の二〇二〇年四月を期して送配電事業の法的分離を迫られる。東電の新体制はひとまずそれを先取りした格好だ。
 その東電で、社外取締役という本来なら経営監視役であるハズの立場にいながら、会長として臆面もなく経営の実権を揮い続けているのが數土文夫だ。一一年に就任したNHK経営委員長のポストを一年余で降りて一二年六月東電入り。福島第一原発の過酷事故後、会長をつとめた弁護士で前原子力損害賠償支援機構運営委員会委員長の下河辺和彦の後を受け、一四年四月に就任した。
 NHK経営委員長の報酬は年間三千百万円超。それをなげうって、当時はまだ無報酬だった東電の社外取締役に転じたことで・・・