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社会・文化

「軽度認知症」が氾濫する日本

高齢者「八人に一人」過重なる社会負担

2016年4月号

 いまや誰の身にも襲いかかる病として深刻さを増す認知症。この問題の核心は病魔そのものだけではなく、厚生労働省の無為無策にも起因している。介護保険制度では、介護度を身体能力の低下によって困難になる排泄や入浴などの所要時間で判定し、徘徊する高齢者の見守りはそもそも介護行為としての評価が低い。さらに症状が見えにくい軽度の認知症ならば、ほとんどが健常者扱いにされてしまう。
 この「軽度」という言葉の響きの陰にこそ、無謀な自動車運転などを許す重大な欠陥が潜んでいるのだ。そこへもってきて、厚労省は軽度の認知症患者が特別養護老人ホーム(特養)に入所できないよう制度を改悪する愚まで犯した。社会保障費の削減という金科玉条に拘泥して、現実に逆行する「福祉行政」に恥じらいも内省のかけらもないお役所仕事こそ、認知症の高齢者を「徘徊する凶器」として世の中に量産している元凶だ。
 二〇二〇年代には実に高齢者のうち「徘徊・暴走予備軍」となる軽度認知症患者は八人に一人と予測され、一刻の猶予もない。この死活問題から目を背ける行政の怠惰のツケは国民に回ってくるのだ。
一割以上が「走る凶器」の予備軍・・・