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シリア「日本人人質」の命運

カタール経由で身代金払えば「解放」か

2016年4月号

 昨年六月下旬、トルコ国境からシリア入りしたジャーナリストの安田純平氏の拉致については、発生直後から日本のメディアによって把握されていた。安田氏は隠密行動をしていたわけではないので、連絡を絶った段階で関係者が捜索とアピールを開始していたからだ。そして拉致した相手はヌスラ戦線であると、これもその時点で判明していた。同行したガイドが証言したのだ。
 メディアは人命最優先の対応を取らざるを得ず、沈黙した。拉致された疑いが濃いのに報道がないと、安倍政権の圧力や「自粛」を揶揄する声がSNSで流れたが、それは理由でない。国内で人質事件が起きた場合、メディアが騒ぐと殺される恐れがある、という話と同じである。ヌスラ戦線による拉致であれば、救出の可能性が高い、と考えられたのだ。実際、今回公表された映像は、安田氏が比較的厚遇を受けていることを示している。夏の軽装で出かけた安田氏は、頭髪や髭こそ伸び放題だが、セーターとマフラーを着用していた。支援者、あるいは家族が差し入れたものであるなら、その映像には関係者だけが知り得る確かなメッセージがあることになる。
安田氏を嫌う安倍政権・・・