三万人のための情報誌 選択出版

書店では手に入らない、月刊総合情報誌会員だけが読める月間総合情報誌

WORLD

ベルギーは「失敗国家」と心得よ

国防力不能の「テロ組織の楽園」

2016年4月号

 ベルギーで三月に起きた連続テロ事件は、国家防衛を常に他国に依存してきた「失敗国家」の悲劇だった。同国の治安機構、軍ともに、自国内の脅威を完全に見逃した上に、対処する人員や装備も持っていない。他国の情報機関からは、漏洩の心配から情報共有してもらえず、政府は「テロ打倒」を国民に約束できないほど、絶望的状況に置かれている。
治安機関の度外れた無策
 事件後の記者会見でシャルル・ミシェル首相は、「恐れていたことが起こった」と、当事者にあるまじき、感想から語り始めた。左隣にヤン・ヤンボン内相、右には検察最高幹部ら政府・司法トップが顔を揃えながら、「テロとどう戦うか」など国民を鼓舞、安心させる発言は出ずじまい。内相ら治安幹部は、事件直後の貴重な時間を首相のお付き合いに空費した。
「何をやっていいのか分からないから、約束ができないのだ」と、会見を見た在米の情報筋は語る。昨年十一月のパリ同時テロ事件から四カ月あまり。自国の首都(それは欧州の首都機能も持つ街だが)の心臓部に、イスラム過激派「イスラム国(IS)」のテロリストの巣窟があるとい・・・