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政治

《政界スキャン》

官邸「メディア圧力」を演出する業師

2016年5月号

 この春、一斉に降板したテレビの報道キャスターたちは、
「政権の圧力はなかった」
 と公言している。いずれも安倍政権に批判的か辛口だったが、
「圧力があった」
 と答えれば屈服して辞めたことになるので、そうとは言えない事情もあるのだろう。
 ただし、全く何もなかったのかと言えば、キャスターはしょせん看板である。日々の放送も大勢のスタッフの見えないお膳立てがあればこそ成り立っている。「顔」は通常、自分の姿勢を支える背中、椅子に腰掛ける尻、全身を立たせる足の裏など見たことすらないものだ。同じく、テレビ局と政権の関係の全容も知っているとは限らない。分をわきまえて、
「私自身が圧力を受けたことはない」
 という程度に余韻を持たせておくべきだっただろう。
 たとえば、某テレビ局がキャスターを交代させた水面下のいきさつをたどってみよう。
 その局の報道番組では、かつて生出演した安倍晋三首相が、政権を批判する街の声の紹介が多すぎると、放映中に文句を言う事件があった。その後も、
「安保法案は違憲だから廃・・・