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経済

東京電力「社長人事」で醜い内紛

「守旧派」が改革潰しで暗闘中

2016年5月号

 闘志、それとも諦念―。三月三十日、次々と電話をかけていた東京電力(当時)の廣瀬直己社長の心境は、おそらく揺らいでいたに違いない。
「よろしく頼む……」
 短い会話の相手は、四月一日付で持ち株会社体制へ移行するに当たり、新たに登用される幹部たち。つまり東京電力ホールディングス(HD)と、その傘下となる①燃料・火力発電、②送配電、③小売りの三子会社の取締役や執行役員である。人事の発令を社長自ら伝えたのだが、幹部たちは必ずしも廣瀬氏が選んだ人材ではなかった。
 それどころか、廣瀬氏自身、二日後に東電HD社長に就けるかどうか分からないのだ。翌三十一日の旧東電最後の取締役会で更迭される可能性は残っていた。
 筆頭株主の原子力損害賠償・廃炉等支援機構は、廣瀬氏を定款にない副会長に祭り上げ、燃料・火力カンパニープレジデントを務める佐野敏弘副社長の社長昇格を強く主張していた。もちろん、背後にいる経済産業省の意向だが、抵抗する廣瀬氏との間で指名委員会、取締役懇談会は紛糾を繰り返し、未決着のままこの日に至ったのだ。
 結果は周・・・