故金日成国家主席の生誕百四周年にあたる四月十五日午前五時三十分ごろ、日本海側の北朝鮮江原道元山近くの海岸線で、一筋の光跡が確認された。だが、それは十分な高度を確保する間もなく、急速にゆがんだ軌道を描き、そのまま海中に突っ込んだ。
　光跡は、朝鮮人民軍が初めて発射した中距離弾道ミサイル「ムスダン」（射程三千五百キロ）だった。三週間ほど前から移動式発射台（ＴＥＬ）に載せて元山地点に展開していたが、満を持して発射したものの、姿勢制御が十分できずに墜落した。
　これを見て、思わずほくそ笑んだ勢力がいた。偵察衛星と高高度無人偵察機「グローバルホーク」でムスダンを監視していた日米韓だった。朝鮮人民軍は二〇〇七年ごろ、ムスダン約五十発を実戦配備したが、発射したことは一度もない。軍事協力関係にあるイランで何度か試射し、データを手に入れたとされるが、実体はベールに包まれていた。
　日米韓の軍事関係者たちは「本当に飛ぶのかどうか。試射しないことが、逆にはったりになって怖い」と漏らしていた。結果は墜落。別の軍事関係者は「我々にとって望外の収穫だった」と喜んだ。
「秘中の秘」まで公開・・・