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「脱石油依存」という サウジの幻想

副皇太子「大改革」はお先真っ暗

2016年6月号

 サウジアラビアがサルマン国王の下で、「十数年に一度」と評される大改革に着手した。石油一辺倒の経済を、金融ハブや製造業も擁した経済大国に変貌させようという試みで、国王の息子で、三十歳のムハンマド副皇太子が全面的にかじ取りをする。一方で、政治や社会の改革は放置したままで、壮大な計画は砂漠の幻影に終わる可能性が濃厚だ。
骨子を作ったのはマッキンゼー
 ムハンマド副皇太子は時の人だ。世界で最も若い国防大臣である上に、第二副首相、経済開発評議会議長にして、王宮府長官。父親のサルマン国王の名代として、いとこのムハンマド皇太子を差し置いて、国家の実権を一手に収めている。エコノミスト誌やニューヨーク・タイムズ紙など世界の名門メディアと次々と会見し、少々不良っぽい表情で、「サウジを変える」と息巻く。ウォール・ストリート・ジャーナル紙では「三十歳の革命家」ともてはやされた。
 五月に発表された政府人事では、二十年以上務めたヌアイミ石油相をファリハ保健相と交代させた。サウジの石油相は、一九六二年にヤマニが就任して以後、三人で切り盛りしてきたの・・・