三万人のための情報誌 選択出版

書店では手に入らない、月刊総合情報誌会員だけが読める月間総合情報誌

経済

訴訟地獄「絶望」の関西電力

「動かぬ原発」を国に明け渡す瀬戸際

2016年6月号

  近畿経済圏を支える三兆円企業の新社長が、かつてこんな失望と憐憫の中で船出したことがあっただろうか。関西財界の有力者はささやく。
「気の毒やけど、業績が急回復する見込みはない。仮に二期四年やるとして、岩根さん、最後まで務め切れるやろか」
 ミゼラブルな将来を観測されるのは、六月二十八日の株主総会後に社長へ昇格する関西電力の岩根茂樹副社長である。同情の理由は言うまでもない、関電の唯一無二の収益源である原子力発電所が一向に営業運転できないからだ。
 高浜三号・四号機(福井県)が紆余曲折の末、四年ぶりに再稼働したのも束の間、三月九日に大津地裁の山本善彦裁判長から運転差し止め仮処分の決定を受け、わずか二週間で停止させられたことは周知の通り。関電は現在、同地裁へ異議申し立ての最中だが、決定が覆らないことは承知しており、地元住民ら原発反対派との決戦は今夏にも大阪高裁の控訴審へ移る。そこで逆転判決を勝ち取ったとしても、再稼働できるのは来年度末。高浜二基は二年は動かないのだ。
 その前に、原子力規制委員会の安全審査が終盤にある大飯三号・四号機(同)が・・・