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経済

《クローズ・アップ》内紛後を担う創業家の「操り人形」

中山泰男(セコム新社長)

2016年6月号

「東京五輪を控える中、素人に経営を任せて大丈夫か」
 警備業界に詳しいある警察OBはこう語った。五月十一日、警備業界最大手のセコムで突然の経営トップ解任劇が起き、揣摩臆測が飛び交っている。
 折しも、セコム創業者の一人、取締役最高顧問の飯田亮についてパナマ文書で名前が取り沙汰されたばかり。一部では、租税回避地問題を巡って同時に解職された前会長・前田修司と前社長・伊藤博が創業家と衝突したという観測が浮上。また、前田の辞任と同時に新役員に就任する飯田の娘婿の人事を巡るいざこざがあったとの噂も流れた。「解任された二人が飯田家と仲違いしたのは間違いなく、コンプライアンス問題が発生したという見方もあるが、原因について関係者が一切沈黙している」(経済ジャーナリスト)。しかし形からみれば、四月に起きたセブン&アイ・ホールディングスでの「鈴木敏文辞任劇」と同様、創業家の強さを見せつけた格好だ。
 新社長に就いたのは常務取締役だった中山泰男。一九五二年生まれの中山は七六年に東京大学法学部を卒業後、日本銀行に入行した。日銀名古屋支店長や政策委員会室長などを務めた後、二〇〇七年・・・