美の艶話 3 「恋多き女」の一途な心三浦 篤(東京大学大学院教授) 2016年3月号 十九世紀前半にパリ芸術界の寵児となったフレデリック・ショパンは、ポーランド出身の作曲家として広く知られているが、その姿を描き留めた肖像画がルーヴル美術館にある。ショパンと親しかったロマン派の巨匠ドラクロワによる作品で、ピアノを演奏中のショパンの繊細な横顔と鋭敏な感性が浮き彫りにされた傑作だ。ただし、この絵がもとは大きな作品の一部であり、別の断片がデンマークの美術館にあることを知る人は少ない。