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WORLD

《世界のキーパーソン》フィリッポ・グランディ 国連難民高等弁務官

「人道危機」救済のプロが登板

2016年1月号

 二〇一六年が昨年に続いて、「難民の年」になるのは間違いない。世界中の難民は史上最大の六千万人超。新任のグランディ高等弁務官は支援の先頭に立つ。

 国連の諸機関の長には、国内政界を退いた政治家が、新たな名誉を求めて就任することが多い。政治家の果てなきエゴだが、「首相経験者は組織の動かし方、メディア操作、カネの分捕り方などに長けている」(在スイス西側外交筋)という側面もある。特に北欧やオランダなどの政治家は英語が達者で、重宝される。

 デンマークのヘレ・トーニング=シュミット前首相が昨年六月の退陣後、「次は難民高等弁務官を」と望んだのも、無理もない。印象的な大きな目の長身で、ブランド好きなことから、「グッチ・ヘレ」の異名もとる。過去の女性の高等弁務官には、日本の緒方貞子氏もいる。ところが、彼女には大きな誤算があった。彼女の政権下で、デンマークは北欧で最も強硬な移民制限政策を続けたのだ。同国は、昨年の欧州難民危機でも、隣国のドイツやスウェーデンと対照的に、受け入れに極めて否定的な姿勢を示した。潘基文国連事務総長(あるいはその側近たち)が、高等弁務・・・