米国に流出する日本人「遺伝子情報」
ゲノム医療で「植民地化」の憂き目
2016年1月号
「まるで、遺伝子ビジネスという黒船が来襲してきたようだ。日本の遺伝子医療が米企業に支配される恐怖を感じる」
都内で遺伝の研究をする専門家は現状についてこう危惧する。高齢化が進む日本では医療費を有効に活用するために、遺伝子情報を利用した個別化医療がますます重要な分野になってきている。しかし、百戦錬磨の米国企業が日本に乗り込み、市場獲得を目指して強かな戦略を進めている。日本の医薬品の市場規模は十三兆八千億円で、米国に次ぐ世界第二位の巨大市場だ。遺伝子情報を使った治療が本格化する中で、日本は米企業の草刈り場と化しつつある。
国を挙げゲノム情報集める米国
米企業は、ヒトゲノム計画が始まった当初から、どのようにビジネスを展開するか戦略を立てていた。同計画がほぼ終了したと発表された二〇〇〇年六月時点で、米国ではすでに遺伝子に関する特許申請が殺到していた。ヒト遺伝子の総数は約三万とされるが、そのうち約二〇%については米国の民間企業や政府機関が特許を取得したとみられている。
米政府は個別化医療を推進して医療費を削減させようと、体制づくりを進めてきた。米国は、・・・