箱根駅伝と「カネ」
欲望渦巻く「感動ドラマ」の舞台裏
2016年1月号
汗と涙。抜きつ抜かれつの攻防や一気のごぼう抜き。倒れ込む選手とそれを見守る沿道の観客。必死の形相で襷を繫ぐ学生の姿を、おせち料理をつつきながら観戦する。日本の正月の風物詩である箱根駅伝の呼称は読売新聞社の登録商標だ。正式名称は東京箱根間往復大学駅伝競走。感動のドラマの舞台裏では、大学、スポンサー、テレビ局、広告代理店などの欲望が渦巻いている。学生の爽やかなイメージとは裏腹に箱根駅伝はカネにまみれたスポーツビジネスだ。
有力な高校生を「買い集める」
知名度を上げたい大学は近年、こぞって駅伝チームの強化に走っているが、箱根への戦いは、入学前のスカウティングから始まる。高校生への勧誘合戦は年々激化しており、そこではカネがモノを言う。都内大学のコーチが語る。
「選手の資質を見極める目が必要な野球のスカウトと違い、陸上競技は競技会での記録というわかりやすい判断材料がある。いい記録を持つ選手には関東の大学からのスカウトが殺到する」
例年、高校三年生で五千メートルを十四分台で走る金の卵は全国で三百人ほどいる。中でも十四分三十秒以内で走・・・