人民元が招く「大波乱」の一年
世界「同時不況」の危機高まる
2016年1月号
国際通貨基金(IMF)の特別引き出し権(SDR)への採用が決まり、世界の主要通貨の仲間入りを果たした人民元に急落のリスクが迫っている。輸出産業の惨状が深まるなか人民元の先安感が募り、外為市場で人民元売りが加速。それに対抗する中国政府の人民元買い支えの能力に不安感が高まり、中国指導部が人民元安容認に傾いている気配も濃厚だからだ。人民元の急落は中国の購買力をさらに低下させ、新興国景気の終焉で足元のふらつく世界経済に強烈なパンチになる恐れがある。
二〇一五年の十二月、世界の金融機関で働く為替ディーラーの多くは、人民元の動きに不安を覚えた。中国人民銀行(中央銀行)が営業日の毎朝設定する人民元取引の対ドル基準値が連日切り下げられ、人民元はおよそ四年半ぶりの安値に沈んだからだ。
中国の外為市場のシステムは先進国とは大きく異なる。市場での実取引で決まるレートとは別に人民銀行が基準値を発表しているからだ。為替レートを中国にとって好ましい水準に誘導する狙いで、元々は貿易黒字の拡大によって人民元が急激に上昇することを防ぐ目的だった。実勢レートが人民銀行の示す基準値より人民元高に大きく乖離・・・