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連載

日本の科学アラカルト64

まだ進化が止まらない「有機EL」の可能性

2015年12月号

 五年ほど前に「有機ELブーム」ともいうべき時期があった。当時、メディアで盛んに曲がるディスプレイが紹介されて盛り上がりを見せていた。二〇一四年にソニーなど有力メーカーが有機ELディスプレイの生産から撤退したこともあり、ブームはすっかり去ったようだが、この技術の発展はいまだ続いている。  有機物に電気を流して発光させる研究は、一九五〇年代から始まった。現在の有機エレクトロルミネッセンス(EL)の原型となっているのは一九八七年に米社が開発したものだ。有機ELは材料が有機物という以外、基本的な原理は有機発光ダイオード(LED)と変わらない。半導体の陰極と陽極に電圧をかけて、正孔と電子を内部に注入すると、それぞれが「輸送層」と呼ばれる部分を通過する。正孔と電子はその後「発光層」と呼ばれる部分で結合する。この時に発光材料がエネルギー的に励起され、その後基底状態に戻る際に発光する。ディスプレイはもちろん、照明として使われるが、進化の余地は残されている。  有機ELの発光効率の向上に取り組んでいる代表的研究者が、九州大学の最先端有機光エレクトロニクス研究センターの安達千波矢センター長だ・・・