北方領土「二島返還」を夢見る安倍
日露平和条約締結への危うい「功名心」
2015年12月号
政治指導者はレームダックになる日が近づくにつれ、歴史の画期となる成果を残したいと考え、遺産(レガシー)作りのため、博打のような行動に走る誘惑に駆られる。自民党総裁の任期満了まで三年を切った総理大臣の安倍晋三も、例外ではない。ただし、目指すのは宿願の憲法改正ではない。ロシアとの平和条約の締結だ。そのため、北方領土問題は、歯舞群島と色丹島の二島返還で事実上の「解決」とする構想も浮上しているというから、穏やかではない。
十一月十五日、トルコのアンタルヤで開かれた主要二十カ国・地域首脳会議(G20)の際、安倍はロシア大統領のウラジミール・プーチンと会談した。二〇一二年に政権を奪還して以降、実に九度目の顔合わせには、「最強の大統領」であるプーチンの治世でなければ、領土問題は解決不可能だという安倍の思いがにじんだ。
もっとも、今回の会談でも、一五年中のプーチン来日を見送って「最も適切な時期」に仕切り直すことが決まっただけで、目に見える成果はなかった。日本政府高官は「安倍もプーチンも、国際社会では『ヒール(悪役)』だが、役者としてはプーチンが何枚も上手」と、安倍の肩入れを懸念する。・・・