スーチーはもう「女神」ではない
「成長株」ミャンマーが再び陥る混沌
2015年12月号
「軍事政権時代から、『ミャンマー最大の政治リスクはスーチー』と言われていた。政権交代が現実のものとなった今、不安しかない」
長年、ミャンマー取材をしてきた全国紙外信部のベテラン記者はこう本音を語る。
十一月八日に行われたミャンマー上下両院の総選挙でアウンサンスーチー氏率いる国民民主連盟(NLD)は、地滑り的勝利を収めた。改選四百九十一議席中三百九十を獲得し、民政化後のテインセイン大統領を支えてきた与党・連邦団結発展党(USDP)はわずか四十議席という大敗北に終わった。
一九八九年にスーチー氏が自宅軟禁に置かれてから四半世紀が過ぎ、ようやく民主化が達成されたことになる。しかし、政権を取ったスーチー氏は今後、どのような舵取りをしていくつもりなのか。すでに実務経験のない同氏の政治手腕を不安視する報道が出ているが、現実にはミャンマーを再び混乱に陥れる可能性が高い。
半ば「独裁者」として君臨
今回、スーチー氏が選挙で掲げた公約を見ると、具体性が極めて乏しい。目標として真っ先に挙げられたのは、「法による支配」であり、憲法改正や国内安定がこれに続く・・・