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南シナ海の新たな火種「太平島」

台湾・馬英九「主権宣言」が起こす波乱

2015年12月号

 南シナ海の覇権をめぐる米国と中国の争いで、台湾の馬英九総統が新たな波乱要因に浮上した。来年一月の総統選後の中台関係ともからんで、米国が警戒の目を向けている。  馬総統は退陣まであと半年。レガシー作りのためか、急速に中国へ傾斜した。中国の習近平国家主席との会談を実現する一方で、南シナ海の島へ上陸して領土主張する計画をひそかに進めていた。韓国の李明博前大統領が退陣直前に竹島に上陸し「独島(竹島の韓国名)、大韓民国、二〇一二年夏 大統領 李明博」の文字を刻んだ石碑を建てたのと似ている。 中台接近の裏の意図  台湾メディアが、米国在台湾協会(AIT)のあわただしい動きを報道したのは十一月三日。「AITの代表が台湾の国家安全会議高官と接触し、南シナ海問題でみだりに動かないよう要求している」という。AITは米国が台湾に置いている事実上の大使館だ。  ちょうど台湾メディアの速報で習主席と馬総統の「馬習会談」が七日、シンガポールで開かれるという情報が広がったころだ。馬習会談は、国共内戦で大陸側の中華人民共和国(共産党政権)と台湾側の中華民国(国民党政権)に分かれ・・・