北朝鮮で膨張する「核物質」
「海外流出」の恐れは増すばかり
2015年12月号
平壌の北方、約八十キロの地点にある平安北道寧辺郡。ここは一九八〇年代から米国の偵察衛星が集中的に監視する地域だった。八六年一月に稼働を始めた五メガワット黒鉛減速炉(原子炉)など、北朝鮮が誇る核施設群があるからだ。
今年十月ごろ、衛星が不審な兆候を捉えた。清川江の支流、九龍江のほとりに設置された取水口と排水口付近の水の流れが止まったように見えた。これが何を意味するのか。韓国政府関係者は語る。「まだはっきりとしたことは言えない。だが、炉の中の核燃料棒がこんがりと焼き上がったのかもしれない」
第二期ブッシュ米政権時代の二〇〇八年六月、北朝鮮は六者協議合意に基づき、原子炉に付属している冷却塔を一度爆破した。冷却塔は、原子炉が過熱しないように水冷する施設で、日米韓政府は冷却塔から立ち上る水蒸気の有無などで、原子炉が運転状態にあるかどうかを判断してきた。
北朝鮮が持つ五メガワット原子炉には八千本の核燃料棒が装塡されている。装塡してから原子炉を一~二年間運転させると、燃料棒が焼かれ、兵器用プルトニウム物質が発生する。炉から取り出した八千本の燃料棒・・・