ロシア版「テロとの戦い」の窮状
経済危機に拍車かけるシリアの「泥沼」
2015年12月号
ロシアのプーチン大統領が「テロとの戦い」に気炎をあげている。パリ同時多発テロが世界に衝撃を与えるのを待っていたかのように、十月末にエジプトのシナイ半島で起きた露旅客機の墜落が爆弾テロであったことを公表。「地球上のどこからでも犯人を見つけ出し、罰する」と述べ、「イスラム国(IS)」掃討を名目としたシリアでの空爆作戦の強化を命じた。
シリア北西部ラタキアの空軍基地に配備された航空機だけでなく、ロシア本土から飛び立つ長距離戦略爆撃機までもが空爆に加わった。プーチン政権の統制下にある主要テレビ局は、コンピュータ・ゲームさながらに、次々と標的が爆撃される様を勇ましく報じている。
プーチン政権が旅客機テロについて秘匿していたのは、「シリアでの空爆がテロを招いた」との構図が政権に不都合だと判断したからにほかならない。しかし、パリ多発テロを通じ、ロシア国民には「テロはどこでも起きうる」という感覚が醸成された。もはやひるむ理由はなく、プーチンは逆に「テロリストに容赦なく報復する力強い指導者」を演じ始めている。
国営「全露世論調査センター」が十月下旬に発表したところでは、プーチン・・・