金融市場を揺らす「サウジ財政悪化」
在外資産「大量売却」という不安要因
2015年12月号
原油価格急落でサウジアラビアを筆頭にした湾岸産油国の財政が急速に悪化している。特にサウジは、今年の財政赤字が国内総生産(GDP)比で二一%超になるという火の車状態で、七月に八年ぶりに国債を発行したのに続いて、政府系ファンド(SWF)が巨額の資金をヘッジファンドから引き揚げた。専門家は一致して「原油価格は長期にわたり安値推移」と見るだけに、追い込まれた湾岸諸国のSWFが、世界中に保有する株式の「換金売り」に出るという不安が強まっている。
今年は七百億ドルを引き揚げ
「サウジアラビアの外貨準備は五年で底をつく」
国際通貨基金(IMF)が今年十月、サウジの財政状態についてこんな警鐘を鳴らすと、世界の市場関係者に緊張が走った。IMFの予測では、湾岸協力会議加盟国の今年の財政赤字はGDP比六・三%、サウジは一九・五%(その後二一・六%に修正)に達するというのだから仕方がない。
元凶はもちろん、原油価格の長期低迷だ。サウジ政府の歳入は八〇%以上が石油・天然ガス頼み。ブレント原油価格で見れば、昨年六月に一バレル百十五ドルだったのが、今年十一月下旬には四十ド・・・