「真冬」に凍える新日鐵住金
中国輸出鋼材「1億トン」の大雪崩
2015年12月号
世界の鉄鋼産業に深刻な異変が起きている。中国が今世紀に入って構築した膨大な鉄鋼生産能力の余剰が中国経済の失速で一気に表面化、余剰分が世界に怒濤の勢いで輸出され始めたからだ。新日鐵住金、JFEスチールの国内大手二社は過去十年、安定した経営を続け、この数年は過去最高水準の利益も出すようになっていたが、恵まれた季節は終わり、鉄鋼氷河期に突入する。
「地獄の入り口に立っている心境だ」。ある鉄鋼大手の幹部はこう語る。国内粗鋼生産量は十月ですでに十四カ月連続で前年同月割れしており、年明け一月まで続けばバブル崩壊直後の一九九一~九二年の十六カ月連続の前年割れの記録を塗り替える。
国内鋼材市況は東北地方の震災復興需要や東京都心部のビル建設ブームなど旺盛な需要に支えられ、急落といった状況ではないが、それは大幅な生産調整によって維持されているのが実情だ。生産調整が限界に達し、鋼材輸入が奔流となれば国内の鋼材市況は一気に崩落しかねない。まさに地獄は間近に迫っている。
振り返れば今世紀に入ってからの世界の鉄鋼は、人類が鉄を使い始めてから最大の変化の時代だった。二〇〇〇年に八億トン強だっ・・・