パリ「聖戦テロ」にほくそ笑む国々
「イスラム国」が衰えない理由
2015年12月号
十一月十三日金曜日の夜、パリで発生した同時多発テロを評して、ドバイ在住の専門家は「テロの教科書『野蛮性の管理』によってモデル化された、国家の威信を突き崩し心理的圧迫を与える型のテロ攻撃が『イスラム国(IS)』の手によって最も効果的に実行された」と感嘆した。アラビア語で書かれた同書は二〇〇四年、イスラム過激主義の理論家アブ・バクル・ナジがインターネットを通じて頒布した、イスラム国家樹立のための指南本だ。アルカーイダ向けに書かれたが、ISがこれを見事に成功させた、というのである。
〇一年の9・11事件より規模は劣るが、衝撃は勝るとも劣らないとまで言われる今回の無差別殺戮を世界はどう受け止めたのか。組織の首領や呼び名がアルカーイダからISに変わろうとも、その名と理念に基づいて聖戦テロを起こす狂信集団のネットワークは世界的に拡大の一途を辿っていると認識されたのではないだろうか。欧米の受けた衝撃の意味するところはまさにこの点にある。
意図的に作られた「現代の妖怪」
別のアラブ人有識者は、一四年にISの勢力が急伸したことを指摘して、「世界は大罪を犯した」と嘆い・・・