バブル「膨張」のサイバー防衛産業
「中国脅威」追い風に急成長続く
2015年11月号
とんだ茶番劇とは、このことだろう。
「(サイバー問題に関し)今後の方策について、米中両国が共通の理解を得た」
九月二十五日、訪米した中国の習近平国家主席とオバマ大統領は、首脳会談後の共同会見でこう述べた。だが、その後も中国は米企業へのサイバー攻撃を続けていたことが明らかとなり、注目度ゼロの首脳会談を象徴する結果となった。
中国から米企業への今回の攻撃を報告した企業の名を「クラウドストライク」というが、大半の読者は聞いたこともないだろう。米国を中心に今、こうしたサイバー防衛ベンチャー企業が雨後の筍のように乱立している。
「攻撃元を特定した」「このシステムには重大な脆弱性がある」などとサイバー攻撃の危機を叫べば、一夜にして英雄となれる業界。サイバー防衛産業は、注目を浴びて資金を調達し、上場を果たせば、時価総額がどんどん膨張していく。ISEサイバーセキュリティ株価指数は、四年前の八五ポイントから二五〇ポイントへ三倍も跳ね上がった。
本誌で二年前に紹介したビッグデータ分析を行うサイバー防衛会社パランティールの時価総額は当時十数億ドル程度と評価されていたが、・・・