ドイツは「多重危機」を乗り越える
VW・難民問題を「好機」に変じる底力
2015年11月号
ドイツのメルケル政権が決定的な岐路を迎えた。移民・難民の殺到、極右暴力の台頭、フォルクスワーゲン(VW)社の違法ソフトウエア問題など、今年は多重危機の大波が欧州最大の経済大国を圧倒しているように見えるが、ドイツ国内では早くも、こうした危機を変化への好機に変える兆候が表れている。ドイツ経済を支えてきた「ドイツ・モデル」は、二十世紀の二つの世界大戦での敗北など、危機の大波を何度も乗り越えてきた。今のドイツの最大課題である「人口減社会」に対して、今回の多重危機の中から解決策を見いだせるかに、ドイツの将来がかかっている。
大混乱でも落ち着きを保つ政権
ドイツ内外の報道が「難民」「VW」の多重危機で埋め尽くされる中、ドイツの大転換をうかがわせる事象も静かに進行していた。
VW騒動のさなかの十月二日、ドイツ南部の高速道路(アウトバーン)を数台の大型トラックが疾走した。
ただし、このコンボイには、運転手がいなかった。
自動車の名門「ダイムラー」社の「自走トラック」が、ダイムラー幹部とウィンフリート・クレッチマン・バーデン=ビュルテンベルク・・・