基礎科学研究が「やせ細る」日本
「ノーベル賞受賞ラッシュ」は早晩終わる
2015年11月号
二日連続の受賞に沸き返った日本人のノーベル賞受賞と、昨年大騒動を巻き起こしたSTAP細胞事件。この二つは表裏であり、科学という舞台での栄光と転落という意味はもちろん、日本の科学界を取り巻く環境の過去と現在を表している。ノーベル賞の連続受賞という慶事は、日本の科学の暗い未来を暗示しているのだ。
「まだ少しは以前の貯金はあるが、それもやがて払底してしまう。これからノーベル賞とはどんどん縁遠くなっていくのではないか」
こう語るのは、宇宙物理学者で名古屋大学、総合研究大学院大学の名誉教授である池内了氏だ。今の受賞ラッシュは早晩終わってしまう、その理由はなにか。
高度成長時代の遺産
二〇〇〇年以降の期間だけをみれば、日本のノーベル賞受賞者数は米国に次ぐ世界二位の水準だ。日本人第一号受賞者である湯川秀樹氏が「中間子の存在の予想」などの成果を評価されて物理学賞を授与されたのは一九四九年。それ以降、四十一年の間に平和賞、文学賞を除く受賞者は五人だった。
二〇〇〇年に導電性プラスチック合成で化学賞を受賞した白川英樹氏が、この成果を発表したのは一九七六年・・・