「人工知能」が一変させる金融市場
人智を超えたマネーゲームの時代
2015年11月号
ニューヨーク市場のダウ平均株価がこの夏、寄り付き直後から前日比一千八十九ドルの安値を付け、日中の下げ幅としては過去最大を記録した衝撃は記憶に新しい。株式の世界では「フラッシュクラッシュ(瞬間暴落)」と呼ぶが、その大きな原因はヘッジファンドの新潮流となっている「高頻度取引」とビッグデータ、そして人工知能(AI)だ。これらを駆使した取引は、金融市場を制御不能とする「元凶」になりかねない。もはや世界のマネーゲームは人智を超えたところで異常変動を引き起こす新たなステージに突入している。
株式のほか、債券、商品、為替など他の市場でも、似た現象が急増している。債券市場の流動性とボラティリティの異変について、米連邦準備制度理事会のタルーロ理事は断言を避けながらも、考え得る原因の一つとして「高頻度取引」を挙げている。
高頻度取引の問題は、二〇〇九年七月にニューヨーク・タイムズが指摘していたが、当時は他のニュースの狭間に埋没していた。しかしその後、ノンフィクション作家マイケル・ルイス氏が高頻度取引の実態を描いた小説『フラッシュ・ボーイズ』を執筆。一四年三月、小説の発売前に米TV番組「6・・・