三菱重工「原発事業」が存亡の岐路
仏アレバと中国の「餌食」になるか
2015年11月号
「外堀は見事に埋められた……」
三菱重工業からは、もはや諦念の声しか聞こえてこない。
安倍晋三首相が十月五日、来日したフランスのヴァルス首相と会談し、経営再建中の同国の国営原子力大手、アレバグループへの日本企業の出資を要請されたことは周知の通り。それに先立って首相官邸では、両国の首相と官民原子力関係者によるハイレベル対話が開催されたが、そのプレスリリースには三菱重工を名指しした文言が明記されていた。
〈双方は、日仏原子炉ATMEA―1に関する協力の重要性を確認した〉
「アトメア1」とは、三菱重工とアレバの折半合弁会社が開発した出力百十万キロワット級の中型原子炉。安倍首相とオランド仏大統領のトップセールスが奏功し、二〇一三年十月、トルコから四基の受注を獲得した、いわば〝日仏の国策原発〟だ。両国政府はその世界展開の推進に合意しており、当然、三菱重工はアレバの要請に応じると官邸や経済産業省は受け止めている。しかし、ハイレベル対話に出席した三菱重工の宮永俊一社長の表情は硬かった。
それも宜なるかな。アレバの業績不振は深刻であり、その〝救済出資〟は大きな経営リ・・・