嘆くべき歯科医療「後進国」への転落
国民健康の「基盤」が崩壊
2015年11月号
「日本の歯科医療の未来は、これで絶望的になりました」
都内の歯科医師が嘆く「これ」とは、日本歯科医師連盟(日歯連)がまたしても引き起こした不祥事だ。九月三十日、東京地検は政治資金規正法違反容疑で、日歯連の前会長である高木幹正ら元幹部三人を逮捕した。二〇〇二年に発覚した中央社会保険医療協議会(中医協)委員への贈収賄事件、〇四年の自民党橋本派議員への闇献金事件に続くスキャンダルである。
日歯連が腐った政治組織であるのは論を俟たないが、国民にとっての真の大問題は、日本の歯科医療の「根腐れ」である。来春の診療報酬改定で歯科治療費が大幅に引き下げられれば、歯科医療の質はどん底まで落ちていくだろう。
安すぎる治療費
我が国の歯科治療費は、先進国で例を見ないほど安い。東京医科歯科大学の川渕孝一教授が行った歯科治療費の国際比較によれば、一本の歯の根管治療(ムシ歯で死んだ神経や血管を取り除く治療)の費用は、日本が五千八百三十九円(二〇〇〇年の厚生労働省調査に基づく)なのに対し、米国は十万八千十一円、英国は九万二千二百二十円、フランスは四万三千九百二十円だ。
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