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連載

続・不養生のすすめ58

フレイルをめぐる混乱①
柴田 博

2015年10月号

 最近〝フレイル〟という用語が、新聞、雑誌、ある種の啓発書の紙面に躍っている。インタビューに訪れる記者の中には、あまり人口に膾炙していないカタカナ文字を、一般大衆より早く使用していることに興奮気味の人もいる。

 そういう人達の中には、フレイルは、加齢学や高齢者問題の新しい概念だと思い込んでいる人が少なくない。健康科学や医学の分野では時折、新しい疾病や症候の概念が現れる。たとえば〝新型うつ病〟がそれである。戯画化のそしりを受けそうであるが、〝遊んでいるときは正常なのに働きに行くとうつ状態となる〟というくだんのうつ病のことである。また、うつ病性仮性認知症という症候も登場している。認知症そのものはないのに、うつ病のため認知症そっくりの症状が表れるのである。真性の認知症と仮性認知症は、外見は似ていても治療法はまったく異なり、認知症の症状の改善の予後も、仮性認知症の方がはるかによい。ともあれ、フレイルはこれらのような新しい概念とはまったく異なるのである。

 フレイルという用語が急に一般化したきっかけは、二〇一四年五月に日本老年医学会が公表した「フレイル・・・