農家を裏切る「農協改革」の深層
JA全中は安倍政権「翼賛組織」に
2015年10月号
九月十五日夕、皇居前のパレスホテル東京の「葵の間」は、全国農業協同組合中央会(JA全中)の幹部、各都道府県単位の農業協同組合(JA)中央会会長、農林水産省の官僚、農林族を中心とする与野党国会議員ら約五百人で埋め尽くされた。
全国約七百の農協を束ねるJA全中の新会長の披露宴だ。新会長に就任した奥野長衛JA三重中央会会長は「(農協改革の推進で)背中を押していただきたい」と控えめに挨拶。大島理森衆議院議長ら四人の短い祝辞の後、すぐに乾杯に移った。
会場に勢ぞろいした農林族の国会議員に出番はなかった。新体制になったJA全中は、「政治活動は全国農業者農政運動組織連盟(農政連)に任せる」という農協改革の精神を忠実に演出した。
しかし、JA全中会長の交代劇の実態は、奥野会長ら「改革派」と、JA全中専務理事から国政に転じた山田俊男参議院議員を中核とする「守旧派」との暗闘であり、JAグループ全体としてみれば、政権与党の御用機関としての性格を一段と強めるだろう。
墓穴を掘った守旧派
本誌五月号で報じたように「クーデター」に近い電撃的な「解任劇」で萬歳章・・・