《政界スキャン》
「ポスト安倍レース」の本命は誰か
2015年10月号
表向き無風で通過したように装われた安倍晋三の自民党総裁再選は、「一強体制」と呼ぶには程遠い覇気の乏しさが、長期政権どころか、終わりの始まりを予感させる。いつ、どのように、かはともあれ、多分安倍はこの総裁任期を全うできまい。政治勘がある者なら誰しもそう直感したからこそ、再選と同時に「ポスト安倍レース」の幕が開いた。三年先の話ではない。年内か、あるいは一年後に辞めても不思議はないぞ、という身構えである。
何かにつけて安倍が鑑とする岸信介は、改定安保条約が自然承認される三日前に、成立後の辞任を決断していた。その前日、国会前のデモで東大生が死亡し、アイゼンハワー米大統領訪日を中止せざるを得なくなったのが決め手となった。退陣は自然承認の四日後、批准書交換で条約が発効したのを待って表明された。
後世どれだけ岸の功績が評価されようと、あの時点での民心は疲弊しきっていた。対決の政治、権力の強引さに、安保改定への賛否を超えて皆が懲り懲りし、合意の政治、休息と矛先の転換を欲していた。「寛容と忍耐」「低姿勢」を掲げる池田勇人への政権移譲は、岸の尊大・豪胆を以・・・
何かにつけて安倍が鑑とする岸信介は、改定安保条約が自然承認される三日前に、成立後の辞任を決断していた。その前日、国会前のデモで東大生が死亡し、アイゼンハワー米大統領訪日を中止せざるを得なくなったのが決め手となった。退陣は自然承認の四日後、批准書交換で条約が発効したのを待って表明された。
後世どれだけ岸の功績が評価されようと、あの時点での民心は疲弊しきっていた。対決の政治、権力の強引さに、安保改定への賛否を超えて皆が懲り懲りし、合意の政治、休息と矛先の転換を欲していた。「寛容と忍耐」「低姿勢」を掲げる池田勇人への政権移譲は、岸の尊大・豪胆を以・・・