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中国「国有企業再編」を巡る政争

経済崩壊で火がついた「利権争奪戦」

2015年10月号

 土石流を予兆する地鳴りのように、中国メディアに「外逃」という言葉が増えた。資産を国外に逃避させること。一億人もの中国人投資家が、中国経済の岩盤に異変を感じ資産保全を考えているのだ。  九月中旬、中国国営・新華社が「李嘉誠を逃がすな」という論文を流した。李嘉誠は、香港最大の財閥、長江実業の総帥だ。だが、数年前から中国国内でのインフラ建設事業などから撤退し、本社も香港から英領ケイマン諸島に移した。中国から見ると外逃の代表だ。  傘下企業で最後まで香港に残った一社も九月上旬、香港から姿を消した。ミスター香港が「逃げ切った」と話題になった。  新華社論文を書いた羅天昊という人物は、国有企業の監督省庁である「国有資産監督管理委員会(国資委)」の研究員だ。「不動産業の利益は政治権力で生まれる。完全な市場経済ではない。勝手な撤退は許さない」。  強気に見えるが、論文は中国の経済成長は政治権力が作り出したもので、実体経済の裏打ちが薄弱であることを認めている。中国の外資系企業はいまや中国国内から東南アジアや本国へ移転を急いでいる。「逃がさない」という羅論文は、撤退トラブルが増え・・・