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チベット「根絶やし」を狙う習近平

民族浄化「最終作戦」に邁進

2015年10月号

 チベットが中国に編入され自治区が成立してから五十周年を迎えた九月一日。チベット族住民による目立った暴動は起きず、中国政府もことさら宣伝工作をしなかったため、表向きは静かに節目を迎えたようにみえる。しかし、水面下では中国政府によるさらなる民族弾圧の準備が進められている。  五十周年の記念式典は一週間遅れの八日になって実施された。中国指導部を代表して出席したのは習近平国家主席でも李克強首相でもなく、序列四位で日本の参議院議長にあたる中国人民政治協商会議全国委員会(全国政協)の兪正声主席だった。  式典に先立って六日には中国当局によって幽閉されている「パンチェン・ラマ」の消息が初めて伝えられた。チベット仏教の最高指導者ダライ・ラマが一九九五年にパンチェン・ラマ十世の生まれ変わりとして後継に指名したゲンドゥン・チューキ・ニマ氏は指名直後に、中国当局に連れ去られた。以降、生死さえ不明だったが、今回、自治区幹部が「普通の生活を送っている」と明らかにしたのだ。中国当局はパンチェン・ラマの転生者にニマ氏ではなくギェンツェン・ノルブ氏を指名している。今回は、ニマ氏の消息を公式に明らかにする・・・