中国と共倒れする「華僑財閥」
東南アジア経済に深刻な打撃
2015年10月号
中国経済の急激な失速は津波のような衝撃を世界に広げ、ニューヨーク、東京など株式市場、為替市場を揺さぶり、米国は予定していた利上げの見送りに追い込まれた。世界経済の激震のなかでもより深刻な打撃を受けているグループがいる。華僑華人である。過去三十年以上にわたって中国経済に成長の原資を供給し続け、自らもビジネスを発展させたアジアの華僑華人は今、中国というブラックホールに呑み込まれかけている。
上海から片道三車線の高速道路に乗って蘇州に向かえば、両側には工場が集まる経済開発区が点在する。そのなかで最も広大で人の目をひくのは「中国・シンガポール蘇州工業園区」である。日立製作所、パナソニック、ダイキン工業、アイシン精機など日本を代表する製造業が拠点を構える中国最大級の産業集積地だ。
その名の通り、華人国家シンガポールが資本と技術を大陸に持ち込んで開発したものだ。鄧小平と今年亡くなったシンガポールのリー・クアンユー元首相の出会いがきっかけで発案されたもので、一九九四年に完成。華僑華人のいわゆる〝里帰り投資”の代表例となり、それ以降の華僑資本の対中進出の促進剤となった。
だが・・・