湾岸産油国が沈むイエメンの「泥沼」
アラビア半島「混乱拡大」は必至
2015年10月号
イエメンのマアリブ州といえば、旧約聖書に語られるシバ王国のダムが存在した場所として知られる、歴史ファン垂涎の地だ。一九八六年、UAE(アラブ首長国連邦)の故ザーイド大統領は崩壊して跡形もなかったダムを再建するために寄進、総貯水容量約四億立方メートルの新しいダムが今も地域の水源として活躍している。
首都サヌアの東、百数十キロに位置するこの要衝は、現在、首都を「占拠している」シーア派武装組織フーシ派を攻略するための地上軍の拠点となっている。その駐屯地が九月四日大爆発を起こし、UAE軍の兵士四十五人を含む「アラブ同盟軍」の五十人以上が死亡した。フーシ派はロケット弾攻撃をしたと戦勝を強調しているが、自家装備の弾薬に引火し、望外の戦果を得たようだ。
この「一度に四十五人が戦死」という数字は、一九七一年に建国され、これまで戦争という戦争を経験したことのないUAEにとっては未曽有の大惨事である。総人口九百万人超の八割以上は外国人、という特殊な人口構成を有するUAE。独立当時の人口は約二十三万人で、そのうちの自国民は「ラクダを借りても数万人足らず」であった、と当時を知るビジネスマンは・・・