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社会・文化

鬼怒川大水害は明らかな「人災」

愚策と怠慢「河川行政」の重いツケ

2015年10月号

 八万八千キロメートル。日本国内に流れる多くの川のうち、「一級河川」に分類されるものの総延長を合計した数字だ。狭い国土に、地球二周分を優に超える長さの川が流れ、日本人はその恩恵に与ってきた。古より、川は大地に潤いを与える一方で、氾濫という形で人間に牙を剝いた。歴史的に洪水の多かった川は、その名前によっても知ることができる。九月に氾濫した「鬼怒川」などはその最たる例だろうし、東京を流れる「荒川」もまた、かつては日本人の生活に大きな影響を及ぼしたことがうかがえる。川を畏れるという、日本人として当たり前の「知恵」が忘れられつつある。  今般の栃木、茨城、宮城における大水害は、そんな日本人が受けるべくして受けた罰なのだろう。最大の原因は、「ダム万能思想」にとらわれた、国土交通省による河川行政の不備にある。加えて、河川流域の都市開発と、住民の覚悟にも被害拡大の理由を求めることができる。 堤防強化を怠った国交省 「これまでのダム至上主義の国土交通省の治水策の矛盾が噴出した結果、堤防が決壊した」  京都大学名誉教授で、同大防災研究所で所長を務めた今・・・