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経済

東京電力の「逆襲」が始まった

福島を切り捨て「盟主返り咲き」狙う

2015年10月号

 大きく「挑戦するエナジー。」と映し出されたスローガンの前を歩き回りながら、身振り手振りを交えて、東京電力の廣瀬直己社長はこう訴えた。 「東京電力は今後も選んでいただける存在であり続けたい、そう願って挑戦してまいります」  八月十八日に開かれた新ブランド・商号の発表会見―。東電は、来年四月の電力全面自由化と同時に持ち株会社制へ移行する。他の電力八社に先駆けて発送電分離し、①燃料・火力発電、②送配電、③小売りの三子会社を従え、首都圏のエネルギー決戦に臨む。記者会見では各社の商号とその意味、事業体制が説明され、とりわけ自由化を勝ち抜く決意が語られた。  米国留学経験があり、英語に堪能な廣瀬氏は、もともとプレゼンテーションを得意とするが、この日のために二回練習を重ねたという。しかし、そのスティーブ・ジョブズばりのパフォーマンスに違和感を覚えたのだろう、福島県紙の記者から質問が飛んだ。 「挑戦する意気込みはよく分かった。しかし社長、同じプレゼンを福島県民の前でできるか!」  一瞬の沈黙。そのあと廣瀬氏は「福島の責任を全うするためにも成長は必要」と応じたが、周囲には・・・