破滅へ向かう「フォルクスワーゲン」
ドイツ国有化か「身売り」の運命
2015年10月号
トヨタ自動車、米ゼネラルモーターズ(GM)と自動車メーカー世界トップの座を競う独フォルクスワーゲン(VW)が前代未聞の経営危機に直面している。米国で発覚し、欧州、アジアに広がったディーゼルエンジン車の排ガス不正操作のもたらす打撃が巨大企業すら吹き飛ばしかねない規模になる見込みだからだ。VWが一部のブランドや海外子会社の売却に追い込まれるとの観測も出ているほか、単独での生き残りすら困難との見方もある。驚天動地の不正によって世界の自動車業界は突然の再編に向かう可能性が高い。
天文学的な懲罰的賠償
VWの犯した不正はディーゼルエンジンの制御ソフトに監督機関によるテスト時だけ、窒素酸化物などの排出を抑制する機能を潜ませ、検査をすり抜けるというものだ。業界では〝Defeat device〟すなわち「無効化機能」と呼ばれ、ディーゼルエンジンでは度々、悪用されてきた。
VWのディーゼルエンジンは世界大手の自動車部品メーカー、ボッシュが主導して開発したものだ。ボッシュは現在のディーゼルエンジンの主流であるコモンレール方式の開発で先行するなどディーゼルエンジンに強み・・・