「安倍一強」という虚像
民意の離反で加速する政権「空洞化」
2015年10月号
自民党本部八階のホールは自民党の権力闘争を象徴する場所でもある。二〇一二年の自民党総裁選で安倍晋三が決選投票の末に石破茂を相手に逆転勝利を収め総裁に返り咲いたのもこのホールだった。それから満三年。九月二十四日午後五時過ぎから開かれた両院議員総会で、安倍は無投票で総裁に再選された。無投票再選は小泉純一郎以来。いつしか安倍を頂点にした日本の政治状況は「一強多弱」と呼ばれるようになった。だが、本当に安倍は「一強」なのか。ひょっとして「虚像」がひとり歩きしているだけなのではないか。この日の両院議員総会にも安倍の翳りを感じさせる空気が漂った。開会時には四百二人いる衆参の自民党所属議員のうち三百十七人しか集まらず、安倍の挨拶が終わると早々と退席する議員がいたからだ。
読売・渡邉に膝を屈した首相
もっとも翳りの予兆はそれ以前から顕在化していた。安倍が政権の命運を懸けた安全保障関連法の参議院での審議が山場を迎えていた九月四日のことだ。四日後の八日には自らの再選を決める自民党総裁選の告示日が迫っていた。新聞各紙、テレビメディアの政治報道もこの二つに集中。そうした中で・・・