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経済

物言わぬ「財界」はもういらない

橘川武郎(東京理科大学大学院イノベーション研究科教授)

2015年9月号

―財界人の存在感がまったく感じられません。

 橘川 きちんとした発言力があった財界人は土光敏夫さんを最後に出てきていないのではないか。経営者がどんどん小物になっているせいもあるが、最近では「財界は必要なのか」という根本的な疑問が出てくるほどの体たらくだ。昔ほど財界が意思を統一できる課題というものが少なくなっているという事情もあるだろう。しかし、たとえば外交では、政治と違った立場をとれる。安倍晋三政権誕生以降、近隣諸国との緊張状態が継続してきたが、財界は建前だけでぶつかる政治家とは別の「外交」を行える。一部でそうした試みはあるかもしれないが、その立場から安倍政権に物申すという形にはならないところが情けない。


―日本全体が抱える問題についても目を引く発言をしません。

 橘川 たとえば、原発問題で財界は再稼働一辺倒でなんら建設的な提言をしなかった。東京電力ひとつとっても課題は大きい・・・