日本の科学アラカルト61
「現代の錬金術」といわれる元素間融合の未来
2015年9月号
「錬金術」という言葉を現代のわれわれが使う場合、いくつかの異なるニュアンスがある。労せずして金儲けをする手段を揶揄する例がある一方、革新的な技術を称えるために用いられることもある。
本来の錬金術とは、字義通り金を創り出すことだ。古代より、鉄や錫といった「卑金属」に手を加えて、金などの「貴金属」を生み出そうという試みが繰り返された。これが化学の源流になったといわれ、かのニュートンも、錬金術にのめり込んだことが知られている。そういった意味では錬金術が人類に貢献した部分は大きい。
結論から言えば、金属や他の物質をいくら混ぜたところで金は生み出されない。血を注ぎ、まじないを唱えたところで鉄(Fe)や錫(Sn)の元素が、金(Au)に変化することはないからだ。
現代科学では、元素そのものを作りかえることは理論上可能であり、「核分裂」と「核融合」という二つの手段がある。たとえば、Auよりも少し重い水銀(Hg)の原子核に中性子線を当てて核分裂を起こせば、Auと同じ原子核を持つ同位体を得ることができる。ただし、そのために使う膨大なエネルギーを考えると採算は合わない。後者は現時点で・・・