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連載

西風 412

渦巻く「都構想」の怨念

2015年9月号

 十一月の府知事、市長ダブル選挙に向けて、大阪の迷走が止まらない。水泡に帰した「都構想」の後始末のつけ方を大阪維新だけでなく、自民党も提示できない。 「本庁との往復に時間をとられて非効率だ」  大阪市沿岸部の埋め立て地に建つコスモタワーに通う大阪府職員の嘆きの声だ。大阪市港湾局が中心となって第三セクター方式で建てられた、旧ワールド・トレードセンターが破綻したのは二〇〇九年。当時、府知事だった橋下徹氏が「府庁機能を全面移転する」という方針を掲げて買収した。現在は約二千人の職員の机がコスモタワーのオフィスにある一方、大阪城のお堀畔にある大手前府庁舎にも約三千人の職員が残っている。大手前庁舎からコスモタワーは直線距離でも十キロ近く離れており、電車を乗り継いで三十分以上かかる。府と市を統合し効率化を掲げた維新が、府庁を分断して非効率化しているという皮肉な光景だ。  直接的な原因は二〇一一年、東日本大震災の際に露呈したコスモタワーの脆弱性にある。三月十一日当日、震源から八百キロ離れた場所に建つ五十五階建てのタワーは振幅二・七メートルで十分以上揺れ続け、内装や天井が壊れエレベータ・・・