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政治

《土着権力の研究》山梨県 山日YBSグループ

旧金丸王国で「無駄」高速道路を推進

2015年9月号

 山梨県は首都圏整備法では「首都圏」に分類される一方、行政法では「中部地方」に組み込まれてしまう。どの地方でもあまり目立たない存在だった山梨が近年、脚光を浴びている。東京や埼玉、神奈川のリタイア予備軍の「第二の人生」候補地として人気を博しているのだ。県庁所在地である甲府市の北、八ヶ岳の麓に広がる北杜市にはそうした終の棲家を求める中高年層が集まっている。

 風光明媚を絵に描いたような北杜市で昨年来地元を騒がしているのが中部横断自動車道の建設計画だ。一度は凍結されていた計画が再始動したのは民主党政権時代。昨年には予定ルートの選定が終わり、用地収用は間近に迫る。

道路建設計画の「旗振り役」

「『金丸道路』が浮上したのは三十年前のことだ」

 当時の状況をよく知る、旧日本道路公団OBは呆れたように語る。山梨県はおおまかにいえば、大月を中心とする東部と、甲府盆地周辺の西部にわかれる。前者は富士急行グループが牛耳り、元通産大臣の堀内光雄など堀内家が権力者として君臨している。後者をかつて仕切っていたの・・・