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経済

昭和シェルの哀れな「吸収合併」

対等とは程遠い「売り飛ばし」の深層

2015年9月号

「二時から社長の緊急テレビ会議があるらしい」  昭和シェル石油の本社・支店の管理職の間でこんな囁きが交わされたのは、七月三十日正午近くのことである。多くの社員は胸騒ぎを覚えたが、午後二時がすぎ、三時、四時になっても、会社からは一向に音沙汰がない。事態が明らかになったのは日本経済新聞のネット速報記事だった。 〈英蘭シェル、昭シェル株三三%を出光に売却発表〉 「やっぱり……」と、誰もが思った。この瞬間、一九〇〇(明治三十三)年のライジングサン石油の設立以来、わが国に連綿と受け継がれてきた「貝殻」ブランドは消滅が決まったと言っていい。  昭シェルの亀岡剛社長兼CEO(最高経営責任者)はこの日午前、ロイヤル・ダッチ・シェルから出光興産への身売りを通告され、その対応に追われてテレビ会議どころではなかったのだ。しかし、午後六時から都内のホテルで開かれた出光との共同会見では、身請け先の月岡隆社長と固く握手し、「〝対等の精神〟による経営統合」を強調する、笑顔の亀岡氏の姿があった。この茶番には、社員よりも特約店に憤怒の声が渦巻く。  なぜなら、石油元売り再編は昨年末、出光が・・・